変わること、そして“私(たち)らしさ” :『ガールズ&パンツァー最終章第3話』についての雑感

 『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』を見ました。面白いんだろうとは思っていましたが、予想以上でした。TVアニメ放映から10年近くを経て、毎回期待を上回り面白さをアップデートしていく本作には驚きを隠せません。以下、観て感じたことを書き留めます。ネタバレがありますので、ご了承ください。

 


――「戦車と同じように時間もみんなも前に進んでるんだよ」

 

 『ガールズ&パンツァー最終章』、特に本作(第3話)で描かれたことは、角谷杏が発したこの台詞に集約されるように思う。
 「最終章」においては、第1話から「変わること」が物語の前面に押し出されている。「最終章」では、大洗女子学園が“追う者”から“追われる者”へと、立ち位置が根本的に変わっていることからもそれは明らかだ。その上で、第2話からは追う者である知波単学園、そして大洗女子学園もまた、追われる者として変わっていく様が描かれているように思う。

 第2話は西絹代の「我々は変わらねばならない!」という台詞で締めくくられた。その言葉通り、第3話では、知波単学園はトレードマークである「突撃」を封印し、周囲の予想に反して大洗女子学園を追い詰める。
 そこで封じられた「突撃」は、彼女らの“私たちらしさ”である。自分たちの“らしさ”を封じてまで、本作で彼女たちは「勝つこと」を希求し、最後は今一歩及ばなかったものの、ついに西住みほ率いる「Ⅳ号」を撃破するまでに至る。

 一方、知波単・大洗女子の激戦後に描かれた、プラウダ高校と黒森峰女学園の試合においても“変わること”と“らしさ”にスポットが当てられていた。
 留学でドイツに飛んだ西住まほに変わり、今大会で黒森峰の隊長を務めるのは、逸見エリカ。黒森峰らしい戦いを守ろうとするエリカに、まほの「あなたの戦車道を探せばいい」という言葉がこだまする。そして、いつもの黒森峰らしからぬトリッキーな戦術に打って出たエリカは、見事プラウダ高校を打ち破る。

 知波単、そして黒森峰の戦いを通して強調されるのは“らしさ”を乗り越えて変わるということである。
 その上で注意しておきたいのは、ここで乗り越えられるべき“らしさ”の複雑さだ。すなわち知波単の“らしさ”は、彼女らの弱点であった一方で、黒森峰の“らしさ”は、優勝校としての強さの源泉であったという点である。
 このように2校の“らしさ”は両極端であるが、どちらも乗り越えられるべきもの、そしてそれを通じてこそ変わることができるもの、として描かれている。
 
 一方で“らしさ”を乗り越え、変わることは“らしさ”を否定するのではない、ということも述べておきたい。「突撃」を封印し、大洗に奮戦する中、知波単の玉田は、西に突撃させてほしいと申し出る。それに「だが……」と言いよどむ西。しかし、玉田はこう返す。「今回の突撃はこれまでの無鉄砲な突撃ではない」と――。
 
 「変わること」とは“らしさ”を否定し、まったく別のものに変容することなのではなく、おそらくこれまでの“らしさ”見つめた上で、それをアップデートしていくことなのだろう。
 そしてそれは、新作を重ねることを通して、『ガールズ&パンツァー』という作品自体が体現していることでもある。

 最後に、本作の主役である、大洗女子学園に目を向けよう。
 大洗女子学園こそ、TVシリーズからこれまでずっと変わり続けてきたチームであった。だが、それを支えていたのは、知波単の西絹代が喝破したように「西住みほ」という巨大な存在である。これまで大洗を勝利に導いてきた、みほの変幻自在の戦術こそが、大洗の変化を象徴するものである。

 しかし、第3話は衝撃的な結末を迎える。
 そう、これまで大洗の要であり、圧倒的な強さを誇ってきた、あんこうチームの「Ⅳ号」が、序盤で撃破されてしまう、という結末だ。
 みほを失った大洗の、これまでにない「変化」が、第4話では描かれるのではないかと思う。